ホビヲの読書感想文

ホビヲが読んだ本を記録していきます。

『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』川内有緒

私ってば、見てるけど観てなくて、聞いてるけど聴いてないのかも。たくさんの作品を前に、ちょっと触れただけでわかった気になって、咀嚼せずに丸呑みしてた気がする。本書を読んでそう思った。

全盲の白鳥さんと美術館に行った筆者の川内さんは、作品を彼に伝えるために言語化が求められる。見えたものをそのまま口にしても伝わらない。どう感じたのか、どのように考えたのか、自分の言葉で表現する必要に迫られる。白鳥さんに伝える過程で、今まで以上にアートを鑑賞できるという話だった。

残念ながら身近に白鳥さんはいないが、作品を前にその場で思ったことを述べあうのはとても楽しそう。ただ、気を付けなければならない。かつて美術館で作品を前にああだねこうだねとしゃべっていたら、家人に「うるさすぎる!」と注意された過去もある。美術館は静かに、という暗黙のルールを前に、イマジナリー白鳥さんを召喚してひっそり楽しむのが吉なのかもしれない。

目の見えない白鳥さんとアートを見にいく (集英社インターナショナル)
何枚かの絵を見たあとに男性は、一枚の作品を前にして、「湖があります」と説明を始めた。そのあとに「あれっ!」と声をあげ、「すみません、黄色い点々があるので、これは湖ではなくきっと原っぱですね」と訂正した。(P.117)