パリの街角でかたっぱしからおじさんをつかまえて、おじさんの話を聴いて、おじさんのイラストを描いてそれらをまとめた一冊。二週間の滞在で67人も取材をしたというのだからなかなかの強行軍。アポありアポなしいずれにしろ、おじさんたちの年齢の重ね具合は様々で、将来のモデルケースのサンプル帳のようでもあり、ありがたくページをめくる。
いくらか盛って話す人もいるだろうけど、一次情報の持つ魅力にあふれていた。宗主国であったフランスならではの移民問題も、当事者による発言でリアルに感じられる。こういうのはニュースではわからない。市井の人々の声を記録するジャーナリスティックな意義もありそう。
読んでいる私もおじさんだけど、いきなり外国の人に「何をしてる人ですか?」と話しかけられたら何と答えるだろうか。「012356789、、、あ、しがないサラリーマンです」「は?」みたいなやりとりになりそうで怖い。
「ギャンブルをやっていると、人生の勝負どころが読めるようになるんだ。賭け事をしない人間は、思い切って勝負すべきところでグズグズしたり、とんちんかんなところで無駄にアクセルをふかしたりする。だから、ギャンブルしない人間は信用できない」(P.136)